ニュース
News
2学期終業式 校長挨拶
2024.12.24

「創造力」「共感力」を伸ばして感性と知性を磨く

皆さん、おはようございます。

2学期は1年間の中でも、学校行事や部活動の試合やコンクールがとても多い学期です。皆さんはそれぞれの目的、目標に向けて共創する中で、企画運営、メンバーとの調整、コミュニケーションの大切さや、工夫すること、協力することを学んできたと思います。目標達成できた人もいれば、そうでなかった人もいたと思います。しかし、机上では学べない経験はとても大切です。その経験を今後の活動に活かしてください。

さて、2学期、京都大学前総長の山極寿一先生の著書を3冊読みました。ゴリラの研究でとても有名な方です。たまたま、昨日の新聞に掲載されていましたが、ゴリラが日本に来て、丁度昨日で70年となったそうです。多い時で50頭を数えた飼育数も現在は20頭に激減しているそうです。そのゴリラについてアフリカでの現地調査を含め何十年にもわたり、ゴリラの観察・研究を進めている中で、そこから700万年にわたる猿人からの人類の進化、文化、文明の発達についても、様々な面から考察し、現代の人間に必要な資質、能力について提言されている方です。

著書の中では改めて認識させられることが数多くありました。身近な例では、基本的にゴリラのオスは離乳期にさしかかった子供のゴリラを母親からバトンタッチされ、思春期になるまで子育てを一手に引き受けるそうです。オスのゴリラは実はイクメンだったのですね。確かに、子供とたわむれる姿がよく動画で見かけます。

また、サルの社会では力で勝ち負けをはっきりさせてトラブルを避ける、防ぐように出来ているので、弱いものいじめが起きることもあるそうです。また、サルにとって食事は個体本位の行動であり、仲間と一緒に楽しむ姿はないそうです。ところが、類人猿であるゴリラやチンパンジーは全く違います。オスのゴリラは子供のゴリラやメスのゴリラに食べている場所を譲ったり、食べているものをとらせてやったりもします。チンパンジーに至ってはもっと積極的で、催促があれば手渡しする時もある。ゴリラもチンパンジーも食物を分配して一緒に食べることが出来るのですね。人間と同じように向かいあって同じ食物を口に入れることが出来ます。

身近な事例を2つ挙げましたが、さらに深く、ゴリラをはじめとする類人猿の研究をすることで、現代の人間にとって必要な能力について、いくつかのキーワードが挙げられていました。それは、「共感」「利他」「言葉」「多様性」「シェアとコモンズ」です。人類の祖先が直立二足歩行によって熱帯雨林から肉食獣が多くいるサバンナに行動域を広げたとき、生き延びるために発達させてきた能力、それは「創造力」と「企画力」、そして、「共感力」に基づく協力であったそうです。

現在、高度情報化社会、グローバル社会においては、多様化して混とんとした社会、先行きが読みづらい社会において必要な力は、改めて人類が700万年の進化史で築き上げてきた「創造力」「共感力」と述べています。さらに、様々な情報の波に洗われながらも、重要なことに気づく「感性」とそれを応用する「知性」であると。デジタル化の波に洗われる現代、オーストラリアが、16歳未満のSNS利用を禁じる法案を可決したことは皆さんの記憶に新しいと思います。暴力やいじめなど、有害な情報から子供を守るためだそうです。規制するか否か、難しいところですが、日本でも、SNSを入り口とした「闇バイト」に中高生が手を染める時代でもあります。フェイクなど悪意ある情報も氾濫しています。また、昨日のニュースではインターネットの利用をやめられない、いわゆる「ネット依存」が疑われる中学生と高校生がおよそ4人に1人に上るとする大学による調査結果が出ていました。専門家は「ネット依存の問題が深刻化した可能性が高く、早急な対策が必要だ」と指摘しています。本校でも例外ではありません。SNS、インターネット、AI等の活用の仕方を間違えている人もいます。正に、「重要なことに気づく感性とそれを応用する知性」を身に着けることが大切です。感性と知性を育むために知識を増やすことは必要で、知識がたくさんあるということは、判断材料が多いということ。材料が多ければ作れる料理も増えるように、知識が多ければ実践できる場も増えます。皆さんは教科書や先生から多くの知識を得ています。知識と言う土台の上に、先ほどの料理でありませんが、知的活動である思考があり、その先に創造力があります。

したがって、行事、部活動、課題研究、一中一高ゼミ等の様々な活動や、読書を通して読み解く力を身に着けるなど、多くの経験を積むことで、共感力を身に着け感性を磨くことです。知耕実学通して体感したことに仮説をたて、実証・実験、考察、判断、行動・表現するという思考のプロセスを繰り返し、知を耕して、思考力、創造力、共感力をみにつけ、「重要なことに気づく感性とそれを応用する知性」を身に着けるようにしてください。

最後に、3点確認です。

1点目は、年末年始もしっかりと感染症対策をしっかり取ってください。

2点目は年末・年始は1年の中でも、もっともあわただしい時期です。12月は交通事故がとても多いです。交通事故や犯罪等に巻き込まれないように注意して、1月の3学期始業式に元気な顔を見せてください。

3点目は高校3年生、日頃の君たちの早朝から、放課後遅くまで、そして休日も取り組んでいる姿を見ていて、校長としてもとても感心しています。高校3年生の学年便りの裏面にメッセージを書きました。内容を取捨選択して、使えるところは参考にしてください。応援しています。

私からの終業式の挨拶は以上となります。