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令和5年度修了式校長挨拶

3月1日に東京農業大学第一高等学校の卒業式が行われました。冬休み期間中や3学期、多くの高校3年生が毎日のように、自習室、ラウンジに登校し、目標達成に向けて頑張っている姿がありました。とても感心しました。その72期生317名が、それぞれの道に巣立っていきました。卒業式後には高3生が製作した3年間の振り返り動画もあり、とても素晴らしい行事となりました。本日は修了式の後、中等部生3年生の卒業式があります。義務教育の修了であります。

さて、復習です。3学期の始業式に話したことを覚えているでしょうか?7月にお札のデザインが変わります。それぞれ、一万円札は福沢諭吉から渋沢栄一へ、五千円札は樋口一葉から津田梅子へ、千円札は野口英世から北里柴三郎へとかわります。この3名渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎の言葉に触れながら話をしました。

渋沢栄一は「夢七訓」を通して夢を持つことの大切さ。津田梅子は「成し遂げることが難しくても挑戦し、継続することが成功の鍵」のお話し。北里柴三郎は「基礎がなくては極められない」というお話でした。どれも大切な言葉でした。今日は3学期始業式後、連日のように、政治、戦争・紛争等の様々なニュースが放送されていますが、世界が、グローバル社会が追い求めている夢のうちの一つ「宇宙」にかかわる話をします。

数々のトラブルを乗り越えて帰還した小惑星探査機「はやぶさ2」は、広く科学への関心を高め、いまも記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。「はやぶさ2」のミッションは生命の起源にも迫ることでした。身近な例でいうと高さ634mの東京スカイツリーから地上を目標にした場合、1mmの1000分の2mmを目標としたものでした。本当に気の遠くなる話です。その目標達成に向けてJAXAはもちろんのこと、大手メーカーから数人の町工場まで100社以上が携わっており、職人さんたちの熱い思いも乗せており、日本のものづくり技術の粋が結集していたことも話題になりました。正にチーム「はやぶさ」でした。

今年に入り、この宇宙を目指した報道が毎月ありましたが覚えていますか?

1月はJAXAのSLIMが月面着陸に成功したね。月面着陸の成功は、世界で5番目となります。今回、SLIMが世界で初めて挑戦したのが、これまでの数km~十数kmと比較して桁違いに高い100m以内という「精密(ピンポイント)着陸」でした。SLIMは、「月の狙った場所へのピンポイント着陸」、「着陸に必要な装置の軽量化」「月の起源を探る」といった目的を小型探査機で月面にて実証するというものでした。「はやぶさ2」のときと同様に民間の会社が携わり、玩具メーカーのタカラトミーなどが開発参加した超小型変形ロボット「SORA―Q(ソラキュー)」が搭載されていることでも話題を呼びました。球体から左右に両輪が開き月面を走行して撮影する。走行方法はムツゴロウやウミガメの動きがヒントだそうです。異分野の企業と宇宙開発分野の連携も注目されていました。JAXAの自己採点が「ぎりぎり合格の60点」と厳しいのは、月面到達後にスリムの太陽電池が働かず、活動の縮小を余儀なくされるおそれがあるからだそうです。

2月は日本の新たな主力ロケット「H3」の2号機が17日午前、打ち上げに初めて成功しました。激しさを増す宇宙ビジネスをめぐる国際競争で今後の日本の宇宙開発を担う“切り札”として対抗していくことが期待されます。H3ロケット試験機1号機の打ち上げ失敗を受け原因究明に真摯に向き合い、再発防止に向けて全力を挙げて取り組んできた結果であると話しています。

そして、今月3月は民間宇宙企業「スペースワン」の小型ロケット「カイロス」の打ち上げ失敗がありました。ギリシャ語で「カイロス」には「チャンス」の意味があります。人工衛星を、安価かつ高頻度で宇宙に送り届ける「宇宙宅配便サービス」の確立を目指しています。スペースワン社長は「スペースワンとしては、失敗という言葉は使いません。すべて、今後の新しい挑戦に向けた糧と考えている」と話していました。アメリカの宇宙開発企業「スペースX」を率いるイーロン・マスク氏も、これまでに宇宙開発に何度も失敗を重ねてきていますが、先日、スペースXは、NASAの宇宙飛行士を月に送るための大型宇宙船スペースシップの3回目のテスト飛行を成功させたことを祝っていました。スペースXの宇宙船スターシップが2020年代の終わりまでには火星に到達し、さらに将来のバージョンでは星と星の間を旅することになるとを目標としています。

今日の「宇宙」に関する話を通して、皆さんに言いたいことは、今年度を振り返って、来年度の計画を立てるとき、「夢や希望、目標を持ち、決して失敗を恐れないこと」です。物理学者の寺田寅彦の随筆「科学者とあたま」に有名な一文「失敗をこわがる人は科学者にはなれない」があります。科学者に限ったことではありませんね。また、アインシュタインも「失敗や挫折をしたことがない人とは、何も新しいことに挑戦したことがないということだ」と話しています。「成功者だから言える」とそう思う人もいるかもしれませんが、成功者とは挑戦と失敗を実際に体験してきている人です。したがって、彼らの短い言葉には手掛かりが詰まっています。

挑戦と失敗は対極にあるのではなく、二人三脚であると知れば心置きなく挑戦することができます。成功は挑戦の先にあります。次年度に学習や、部活動、委員会、趣味も含めて目標を立てる際に、失敗を恐れることなく計画を立ててください。

最後に、春休みには,病気や怪我に十分注意をして過ごし,4月6日の始業式に皆さん揃って,会えることを祈願して、私の挨拶とします。