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9月1日校長による防災講話及び始業式挨拶

〔 防災講話 〕
皆さん、おはようございます。本日、9月1日は「防災の日」ですね。私からはこれまでの復習と確認を含めて、〈目的〉〈防災の日制定の経緯〉〈現在の状況〉〈基本的な対策〉の4点についてお話をします。
日本は地球の表面を覆って日々、少しずつ動いている数十枚のプレートのうち、4枚のプレートの境界線上に位置していることで地震が多く発生しています。2018年の有感地震だけで、約1年間で2152回、約4時間に1回起きています。更に、地震だけでなく、日本は台風の通り道になりやすく、台風、大雨、大雪、洪水、土砂災害などの災害が発生しやすい国です。そのため、「防災の日」の目的は、災害について認識してもらい、備えるということです。
次に、「防災の日」の制定の経緯について簡潔に確認をします。既に報道されていますが、100年前の今日、1923年(大正12年)9月1年前日11時58分の丁度お昼時に、大正 関東地震が起きました。震度7の大地震が相模湾を中心に関東を直撃し、発生時刻が昼食の時間帯だったこともあり、多くの場所で火災が発生し、強風を伴った火災が鎮火したのは2日後の9月3日の10時頃でした。
10万人以上の死者を出し、そのうち約9割の9万2千人が焼死でした。正に、被害のほとんどは火災によるものでした。8月8日のハワイ・マウイ島で発生した火事について、皆さんも、島全体が火に包まれている映像をニュースなどで観たと思います。強風にあおられ、翌日にかけて瞬く間に市街地に広がり、道路に残る焼け焦げた車の列や、多くの住民が逃げ道を断たれ、海に飛び込んだという証言がありました。いかに火の回りが早く、火災の恐ろしさを物語っています。この大正関東地震に起因する大災害を関東大震災と言います。そして、関東大震災から36年後の1959年に「伊勢湾台風」と呼ばれる台風が発生し、犠牲者約5千人・負傷者4万人にのぼり、明治維新以来最大の災害を起こしました。このことを契機として、翌年、関東大震災から37年後の1960年に「防災の日」が制定されました。
現在、東京都では震度6強(M7.3)と予想されている東京湾北部地震、多摩直下地震等が想定され、発生確率は今後30年で70%とされています。7月に、国立大学での大正関東地震100年シンポジウムに参加してきました。サブタイトル「教訓を首都直下地震対策に活かす」でした。シンポジウムで私が特に、注視したのが「災害も進化している」でした。
この一世紀、日本は耐震構造の強化、更には都市計画で災害に強いまちづくりを進めてきました。その結果、東京都では昨年5月には被害想定を見直し、首都直下地震では耐震化や不燃化が進み、都内の想定死者数は9641人から6148人に減ってきています。しかし、同時に社会全体が変わってきており、出火場所などで悪条件が重なると被害が5~10倍にもなりうるということでした。東京の人口は約400万人から1400万人に増えました。田園地帯は住宅地に姿を変え、1平方キロ・メートルに4000人以上が住む人口集中地区は10倍以上に拡大しています。
住宅街では、避難経路を炎や煙が塞(ふさ)ぎ、方向転換すると行き止まりで、逃げ場を失う、更には東日本大震災の時と同様に、携帯が通じない、電車が止まる、多くの帰宅困難者がでるなど。最近では、災害地で、SNSによるフェイクニュースもあります。一世紀前とは災害の在り方が変わってきているということでした。したがって、関東大震災だけでなく、阪神淡路大震災、東日本大震災での経験を首都直下地震対策に活かしながら、現在の状況下での発生時を想定しながら被害を減じる対策をとることが大切だということです。
防災に対して基本的な準備や心構えをしてください。〈台風等による風水害〉〈地震〉〈準備〉に分けて確認します。

1つ目 台風等による風水災害についてです。ゲリラ豪雨、線状降水帯、台風に伴う、浸水、土砂崩れ等、明らかに雨の降り方が変化しており、雨の降り方が局地化・集中化・激甚化が進んでいます。
国土交通省によると1時間降水量50ミリメートル以上の年間発生回数は1.4倍になっているとあります。日頃から、準備・確認をし、災害に備えることが大事です。1学期に中学生1年生の皆さんが東京マイ・タイムラインの作成ガイドブック、タイムラインシートを活用して、ある程度予測ができる風水災害時にとるべき行動を学んでいました。「東京都防災ホームページ」にも掲載さていますので、いざという時に慌てることがないように時系列で事前の情報確認から避難行動までを整理しておきましょう。

2つ目 地震に伴う災害について
(1)先ず、大事なのは、地震が起きたとき、また直後の判断・行動力です。
揺れている間の冷静な判断と皆で協力した行動がとれるかです。特に、地震発生からの早期避難率が高いほど、犠牲者は半減から9割減ると言われています。揺れている間は、机の下にもぐるなど、身を守る「自助」が大切です。
(2)続いて、揺れが収まったら、学校では先生の指示のもと、避難経路を通り、基本的にはグラウンドで校舎から遠い場所で、指示連絡が聴こえるように静かに整列して座る。
(3)そして、関東大震災もそうですが死傷者の多くはその後に発生する火災です。
煙の上昇速度は毎秒3m~5mにもなり、人が階段を上がる速さ(約毎秒0.5m)の6倍から10倍です。さらに、有毒物質一酸化炭素(CO)を多くの場合含んでいます。大半は煙を吸って意識不明になったところを炎に襲われた人が多いのです。したがって、火災から避難する場合、できるだけ煙を吸わないことが重要です。
タオルやハンカチで鼻や口を覆う、姿勢を低くして煙の層を避ける、深い呼吸をしてしまうと煙を多く吸い込むことになるため、むやみに大きな声を出したり、騒いだりしない。そして、一度避難したら二度と建物の中へは戻らないことが大切です。

3つ目 風水害や地震に対応する準備をする。
家では家具類の転倒・落下・移動防止対策、地域の危険度・風水害リスクのチェック、2から3日分の非常食等の準備です。そして、地域の避難場所の確認、東日本大震災時にはスマートホンなどが通じないということもありました。情報の確認方法、特に家族との連絡方法を確認することが大切です。
以上、私から〈目的〉〈防災の日制定の経緯〉〈現在の状況〉〈基本的な対策〉についてお話をしました。是非、万が一の時に慌てることがないように備えをするようにしてください。

〔 始業式 〕
今朝、正門で皆さんの元気な姿に会えて、とても嬉しいです。今年の夏は、例年以上に猛暑日が続きました。東京では本日、30度以上の真夏日、猛暑日が過去最多の2010年の71日に並びます。予報を見ると、明日以降、毎日、新記録が続きそうです。このような暑さが続く中で、皆さんの熱中症対応、そしてコロナへの基本的な取り組みで、特に大きな事故もなく、2学期を無事に迎えら少しホッとしています。私はこの夏休み中に、多くの生徒がそれぞれの目標に向けて頑張っている姿を見ました。夏期講習に参加している生徒たちの姿。高校3年生で、土日もなく、毎日のように自習室、図書室、会議室等で目標に向けて頑張っている姿。暑い中、汗をかきながら目標に向けてクラブ活動に取り組む姿。試合や各種コンクールで頑張っている姿。イングリッシュキャンプで頑張っている中1生の姿。クラスの文化祭の準備をする姿など。皆さんの目標、目的に向けて、「共創」し取り組む姿があり、とても感動しました。2学期は桜花祭をはじめ、中3修学旅行などの学校行事が数多くあります。また、クラブ等では新人大会や発表会等もあります。それぞれの目標に向けて「共創」し取り組んでください。これまで、学習にしろ、クラブ活動にしろ、その目標、目的を達成するためには、有名人の逸話、エピソードなどを交えて、計画をSmall Stepで立てること、凡事徹底、小事は大事、Step By Stepが大切であることを話してきました。その目標、目的を達成する方法は様々で、大事なのは自分にあった方法を選ぶことですが、これまでに多くの生徒達を見てきて、私がとても大切だと実感していることです。

今日は、休み前に高校生の「進路だより」で、皆さんに紹介した本から目標を達成するために大切なことを、科学的な知見を交えながら一部を紹介します。東京大学教授で脳科学者の池谷裕二先生の著書「受験脳の作り方 -脳科学で考える効率的な学習法-」です。既に中等部生も借りに来ている人いるということで、その意識の高さに感心しています。この本には、学習法だけでなく、クラブ活動、行事等での目標、目的の達成について、脳科学の科学的知見から「なぜ努力の継続が必要なのか」に通じることが書かれています。図書館にも置いてありますので、興味・関心がある方は是非読んでみてください。
図や簡易的なグラフを少し用いながら説明します。知識の習得やクラブ活動でいうとパスなどの技術の習得も同じですが、Aということを覚えたとすると「A」と「Aの覚え方」の2つの情報が習得されるということです。つまり、Aという知識とAという知識を習得した方法や考え方の情報が蓄積されます。また、新たにBという知識を覚えようとしたときには、Aでの経験が無意識のうちにBの理解を補助し、よりBを習得しやすくなるとのことです。更に、後から覚えた知識Bが同じように、すでに習得したAの理解を深めてくれます。一つ理解したことが相互に影響し合い、「A」と「B」二つの物事を覚えると「A」、「B」、「Aから見たB」、「BからみたA」の連合ということで4つの効果が表れるとのことです。つまり、AとBの2つから相互効果で4つの情報が脳内に生まれるのです。2×2で4ということですね。このことを「記憶の相互作用」というそうです。このように、次々に新しいものごとを覚えていくと、その効果は繰り返され、等比級数的に増えていくことが分かっています。「べき乗の効果」があることが知られているそうです。簡単に言うと2倍、2倍と増えていきます。つまり、努力の継続の効果は中等部でも習っている1次関数のように直線のグラフのように増加するのではなく、2倍、2倍で、2,4,8,16,32,64、128・・・・・高校でいうと指数関数のグラフになります。急激に増えることがわかります。

今の実力が2,4,8、16の人から見れば1024、2048の人は非常に高い実力を持っているに見えますが、でも、横軸で見ると、数回の少しの差なのです。脳科学的には大切なのは、努力を継続して、取り組む回数を少し増やせばあっという間に1024、2048となります。事実か分かりませんが、豊臣秀吉の「米の倍増し」という話があります。秀吉が家臣に対して褒美をやるから好きなものを言ってみろといったことから始まります。これに対し、家臣は今日は一粒、明日は2粒、明後日はその倍。明々後日はさらにその倍。それを31日間続けた数の米をください、と豊臣秀吉に伝えました。豊臣秀吉はそれだけでいいのか、と簡単に了承しましたが、それが大きな間違いで、あっという間に多くなり、結果、他の褒美に変えてもらったという話です。倍々とかけていくと、急激に増えることを物語っています。
話は戻して、更に、成長曲線はもう少し複雑で、伸びない時期があり、めげそうになり、焦ることや、やる気の出ないときもあります。プラトーという時期があり、停滞時期、伸び悩みの時期です。実はプラトーの時期はその後の成長にとても大切で、ここを継続することで次の成長につながるのです。つらい時には淡々と練習をこなすだけでも良いです。時には立ち止まってもよいと思います。でも、歩みを止めずプラトーで継続して努力することで、先ほどのグラフのように、急激に伸びる時期が来ます。イチロー、マイケルジョーダンの逸話でお話ししましたが、コツコツと続けることが飛躍的な成長につながります。これは、受験生でいうところの、現役生は最後まで伸びるのは、ここに理由があるのです。最初は伸び率が少ないのですが、継続することで、成績や技術が上がるときは一気に上がるといわる所以です。今日は「継続」することの大切さについて、少し、科学的な知見を交えてお話ししました。

継続することがつらく感じたときは、少し立ち止まること、淡々と継続すること、実現した自分を想像することです。チームで練習、協力して向上する雰囲気を作り、みんなで乗り越えるということが大切です。スローガンにある「共創」することの効果がここにもあります。

2学期、学習、学校行事、クラブ活動などにおいて、それぞれの夢や目標に向けて、継続的に取り組んでください。学年、クラス、委員会、クラブ、それぞれのチームで「共創」し、工夫を凝らしながら、目標に向けて継続して取り組んでください。私からは以上になります。